【禽浴の滝】について

後山山荘には、見学者の驚くポイントがいくつもありますが、その代表的なもののひとつに山側の池の庭があります。

しかもここにはモミジの林が広がり、特徴的な滝まであります。滝は結構な高低差があるもので、山の水の取水口が十メートル程の高さにあり、ここから上段の滝に流れ、さらに下段の滝に流れて行きます。

四年前の山荘竣工時からは、池に電動ポンプを仕掛け、揚水して落としていましたが、今はわずかながら沢から水を引き、ぽとぽとと落としています。

これがなかなか風流な音をたてているのです。

実は、70年前の前身の鞆別荘時代に、当主の藤井与一衛門が「鞆八景」という漢詩を作っていて、そこにこの滝のことが出てくるのです。

釈文の一部を見ていくと、「春の窓に梅が綻び/風呂の窓から島々に架かる虹が見える/黄梅に春遅くまで鶯が鳴き/禽浴の滝で小鳥が水浴する」とあります。

この滝に、小鳥たちが水浴する「禽浴(きんよく)の滝」という名称をつけていたということがわかります。

現在でも、時々小鳥だけでなくトンビまで来て水浴びをしている光景を目にすることがあります。

もうひとつ驚くべきことに、実はこの庭は回遊式だったのではないか、ということがわかってきました。

山荘のサンルーム辺りから取水口のところまで、反時計回りに登りの小路があるのですが、これがさらに母家脇の蔵の辺りまで降りる小路につながるのが見えてきたのです。

これまで草木に覆われていたのですが、これを少しづつ整備してわかってきたのです。近い将来に滝を中心に回遊することができるようになるかもしれません。なんとも楽しみな「禽浴の滝」のある庭です。

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