最近驚いたこと

最近、新聞を見ていて驚いたことがありました。

去る12月初旬にイコモス(国際記念物遺跡会議)の国内委員会が、後世に残したい「日本の20世紀遺産20選」を発表したことです。狙いは、近現代の文化遺産の価値に目を向け、保全の機運を高めるためであったようです。

そこには、国立代々木屋内総合競技場や瀬戸大橋、青函トンネル、東海道新幹線、迎賓館赤坂離宮といった国家的な建造物とともに、聴竹居(藤井厚二)が選ばれていたのです。我が目を疑いました。1個の建築物としては代々木競技場や赤坂離宮と並ぶものであったからです。専門家たちが、聴竹居についてそれらと同等の価値があると認めたのです。この事実を深く考えなければならないと思いました。

赤坂離宮が明治期、代々木競技場が戦後の代表なら、聴竹居は大正期・昭和初期の代表ということでしょう。日本の伝統的な建築の考え方を重視しつつ、環境工学的な視点を取り入れ、近代的なデザインに落とし込んだことが評価されたのではないでしょうか。近代日本人の暮らし方や趣味の視点までも勘案し、実験住宅を次々と建て、『日本の住宅』という書籍にまとめたのは藤井厚二でした。その例を見ない手法は、近年ますます評価を高めているのです。それは、福山市鞆町にある後山山荘(藤井厚二+前田圭介)においても見ることができるわけです。